人生がぐらついていた頃、ふと逃げるように足を運んだ場所があった。
あの時は、ただの逃避だったのかもしれない。
でも今、もう一度訪れてみてわかった。
見える景色は同じでも、感じ方はまるで違った——。
秋保のクラフトビールが心を癒す時 ~1度目の訪問~
ここに来るのは2度目だった。
1回目は、人生がぐらついていた時。
2回目は、ようやく前を向けた時。
場所は、秋保の山あいにあるグレートデーンブルーイング。森の中にぽつんと佇む、クラフトビールの醸造所だ。仙台中心部から車で約30分。静寂で、のどかで、だけど都会ではなかなか出会えない“濃さ”がある。
最初に訪れたのは、転職活動に立て続けに失敗して、自分の存在価値すら見失いかけていた頃。
仕事で活躍している人の成功が、妙にまぶしく感じて、どこにいても落ち着かなかった。
誰とも会いたくない。自分の殻に閉じこもり、外の光を浴びたくない。でも、何かを変えたい。
このお店のことは噂で聞いていたが、家から遠いし、行く機会がなかった。
しかし、路頭に迷っていた私は、ふとここに訪れていた。
グレートデーンブルーイングとの出会い
秋保の山の奥。秋保温泉の玄関口。森に囲まれたクラフトビール工房。
木の香りと静かな空気、そしてやさしい苦味。
1杯目はお店の名前がついた代表作”GREAT LAGER”から味わうことに。
グラスに注がれたビールは、フルーティーな香りとほのかな甘みが特徴的。
GREAT LAGERの爽やかさは、自分の中にたまっていた澱のような気持ちを、すーっと流してくれた。
何も考えず、ただ喉を通るその瞬間だけが「今、ここにいていい」と思わせてくれた。

GREAT LAGER – GREAT DANE BREWING 公式サイトより
森とビールがくれた静寂と回復
夕暮れの時間帯のため人気は少なく、夕日の日差しが森を照らし、ゆっくりと雲が動いていく。
この落ち着いた空間で1時間ほど過ごした。
「気張らなくていい。自分のペースで進んでいこう」と、秋保の大地に、心を癒してもらった。
ビールを飲みながらぼーっと眺めた木々の風景が、思いのほか沁みた。何かが少しほぐれた気がした。
再訪。転職成功後のリトリート時間
2度目に来たのは、そのちょうど数ヶ月後。
紆余曲折ありながらも、無事に次の転職先が決まった。何1つ妥協せず、おかげさまで希望の職につけたことは、とてもありがたい。
気持ちも落ち着き、GWの休暇にまたここに来た。
今は次の職場で何をモットーに、どう活躍するか。そして辛い状況の中、手を差し伸べてくれた会社に、どう貢献するか。そんな事前準備で忙しい。
気持ちが変わった。前向きに、明るくなった。
生意気にも7種類のモルトを使った、少しリッチなクラフトビール”SCOTCH ALE”を選んだ。
複数のモルトによる絶妙な味は少しコーヒーのような苦味があった。
あと、ここの”チーズカードのフライ”もおすすめ。蔵王チーズを使用したチーズカード。
(そういえば幼い頃、蔵王の牧場で乳搾りをした記憶がある。蔵王山に登った帰りに寄って、ワインに合うチーズを買わないと。)
一口サイズのかわいらしい見た目だから、出来立てを口にいれた瞬間、口の中にチーズがじんわり溶けて舌に広がるこの感覚がとてもクセになる。凝固したチーズの硬さがわかる。
景色は変わらない。でも、自分は変われる
景色が変わったわけじゃない。
どんなに辛かったとしても、あの時の自分がいたから、今の自分がいる。
そしてきっとまた迷っても、この森とビールが、帰る場所を思い出させてくれる気がした。


